セクハラ行為で会社から受ける懲戒処分とは?種類や決定プロセスを徹底解説


職場でセクシュアルハラスメント(セクハラ)を行うことは、被害者の人権を侵害する許されない行為であると同時に、会社にとっては職場環境を悪化させ、訴訟リスクも高める重大な問題です。そのため、多くの企業では、セクハラ行為を就業規則違反として定め、懲戒処分の対象としています。

「セクハラをしたら、どんな処分になるんだろう?」「会社はどのようなプロセスで処分を決めるの?」

このような疑問を持っている方もいるかもしれません。セクハラ行為は、軽い注意で済むものから、会社を辞めさせられるような重い処分まで、その内容や状況によって様々です。

この記事では、セクハラ行為が会社からどのような懲戒処分の対象となるのか、懲戒処分の主な種類や、実際に処分が決定されるまでの一般的なプロセス、そして企業が懲戒処分を行う上で注意すべき点について、分かりやすく解説します。

セクハラが懲戒処分の対象となる根拠

会社がセクハラを行った従業員に対して懲戒処分を行うことができるのは、主に以下の理由に基づいています。

  • 企業のセクハラ防止義務: 男女雇用機会均等法により、企業は職場におけるセクハラを防止するための雇用管理上の措置(相談窓口の設置、社内規定の整備、周知・啓発活動など)を講じることが義務付けられています。この義務を果たす一環として、セクハラ行為を行った者への適切な処分が含まれます。
  • 就業規則上の懲戒事由: 多くの企業の就業規則には、「ハラスメント行為を行った場合」や「会社の秩序を乱す行為を行った場合」などが懲戒事由として明記されています。セクハラ行為は、これらの懲戒事由に該当すると判断されるのが一般的です。

セクハラに対する懲戒処分の主な種類

会社の就業規則には、様々な懲戒処分の種類が定められています。セクハラの程度や状況によって、以下のいずれかの処分が科される可能性があります。処分の種類は、軽いものから重いものの順に並んでいます。

  • 戒告・譴責(けん責): 最も軽い処分です。将来を戒めるための注意が行われ、始末書や反省文の提出を求められるのが一般的です。
  • 減給: 給与を一定期間、一定額減額する処分です。労働基準法により、一度の額や総額に上限が定められています。
  • 出勤停止・停職: 一定期間、会社への出勤を禁止する処分です。その期間の給与は支払われないのが一般的です。期間は就業規則によって異なります。
  • 降格: 役職や職位を引き下げる処分です。これに伴い、給与が減額されることもあります。
  • 諭旨解雇: 会社から退職を勧告され、従業員がこれに応じる形で退職する処分です。従業員が勧告に応じない場合は、懲戒解雇となります。
  • 懲戒解雇: 最も重い処分で、一方的に雇用契約を解除するものです。退職金が一部または全部支払われない、失業給付の受給に制限がかかるなど、従業員にとって非常に不利益が大きい処分です。

セクハラの悪質性や、会社への影響などによって、これらの処分の中から適切なものが選択されます。

懲戒処分が決定されるまでのプロセス

セクハラに関する相談や苦情を受けてから、会社が懲戒処分を決定するまでには、通常、以下のプロセスを経ます。企業は、このプロセスを適正に進める必要があります。

  1. 相談・苦情の受付: 被害者や関係者から、セクハラに関する相談や苦情を受け付けます。
  2. 事実関係の調査: セクハラの有無や具体的な内容を確認するため、被害者、加害者とされる人、目撃者など関係者へのヒアリングや、メール、SNSなどの証拠収集を行います。公平かつ慎重な調査が求められます。
  3. 加害者への弁明の機会の付与: 調査結果を踏まえ、加害者とされる人に対して、事実関係を伝え、弁明や反論の機会を与えます。これは、冤罪を防ぐためにも非常に重要なプロセスです。
  4. 懲戒委員会の開催(設置されている場合): 就業規則に懲戒委員会が設置されていると定められている場合は、調査結果や関係者の意見などを基に、委員会で処分内容について審議します。
  5. 処分の決定: 調査結果や弁明内容、就業規則などを総合的に考慮し、適切な懲戒処分を決定します。処分の重さは、後述する様々な要素を考慮して判断されます。
  6. 処分内容の通知: 決定した懲戒処分について、加害者に対して書面などで通知します。通知書には、処分内容、処分の理由、処分の根拠となる就業規則の条項などを明記するのが一般的です。

懲戒処分の重さを判断する際の要素

セクハラ行為に対する懲戒処分の重さは、セクハラの具体的内容や状況によって異なります。会社が処分の重さを判断する際には、一般的に以下のような要素が考慮されます。

  • セクハラの具体的内容、悪質性: 強制わいせつや強姦といった犯罪行為に該当するような極めて悪質なものか、言葉によるものか、身体に触れるものかなど、行為の内容や悪質性が考慮されます。
  • 行為の頻度、継続性: 一度きりの行為か、繰り返し行われたものかなど、行為の頻度や継続性が考慮されます。
  • 被害者の精神的・身体的な影響の程度: セクハラによって被害者がどれだけ深刻な精神的苦痛や身体的な不調を負ったか(医師の診断書など)が考慮されます。
  • 加害者と被害者の関係性: 上司と部下、正社員とパート・アルバイトなど、両者の間の地位や力関係が考慮されます。優越的な地位を利用した悪質な行為は重く判断される傾向があります。
  • 会社のセクハラ防止策の周知状況: 会社がセクハラに関する規定や相談窓口について、従業員にどれだけ周知していたかという点も考慮されることがあります。会社が十分に防止策を講じていなかったと判断される場合は、処分が軽くなる可能性もゼロではありません。
  • 加害者の反省の有無、態度: セクハラ行為について反省しているか、調査に協力的かといった、加害者自身の態度も考慮されることがあります。
  • 過去の処分歴: 同じような問題で過去に処分を受けたことがあるかどうかも判断材料となります。

企業がセクハラに関する懲戒処分を行う際の注意点

企業がセクハラ行為に対して懲戒処分を有効に行うためには、いくつかの重要な注意点があります。これらを怠ると、懲戒処分が無効と判断されるリスクがあります。

  • 就業規則に懲戒事由として明記されていること: セクハラ行為が懲戒処分の対象となることを、就業規則に具体的に明記しておく必要があります。
  • 事実関係の正確な調査: 懲戒処分は、客観的で正確な事実認定に基づいて行われる必要があります。曖昧な情報や一方的な言い分だけで処分を決定してはいけません。
  • 加害者への弁明の機会の付与: 処分を決定する前に、必ず加害者とされる人に弁明の機会を与えなければなりません。これは、労働契約法でも定められています。
  • 処分の相当性: 行為の悪質性や結果の重大さに対して、科す懲戒処分が重すぎないか、バランスが取れているか(処分の相当性)が重要です。同種の事案に対して過去にどのような処分を行ってきたかなども考慮します。
  • 二重処分の禁止: 同一の非行事実に対して、二度懲戒処分を行うことは原則としてできません。
  • プライバシー保護、守秘義務: 懲戒処分に関する手続きの過程で知り得た関係者のプライバシーや個人情報、相談内容については、厳重に保護し、守秘義務を徹底する必要があります。

まとめ:セクハラは許されない行為。適切な対応と処分が企業を守る。

セクシュアルハラスメントは、個人の尊厳を踏みにじる行為であり、職場における服務規律違反として、会社から懲戒処分の対象となり得ます。その処分は、行為の悪質性や影響の度合いによって、戒告から懲戒解雇まで様々です。

企業は、セクハラに関する相談や苦情があった際には、迅速かつ公平に事実関係を調査し、就業規則に基づき、適正な手続きを経て懲戒処分を行う必要があります。これは、被害者の保護のためだけでなく、ハラスメントを許さないという企業の姿勢を明確にし、再発を防止するためにも非常に重要です。

すべての従業員が安心して働ける、ハラスメントのない健全な職場環境を実現するためには、一人ひとりがセクハラに対する正しい知識を持ち、企業が適切な予防措置と毅然とした対応を行うことが不可欠です。セクハラ行為は、自分自身のキャリアを危険に晒すだけでなく、周囲の人々、そして会社全体に深刻な影響を与えるということを、改めて認識しておく必要があります。

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