泣き寝入りしない!取引先・顧客からのセクハラ被害への会社の責任とあなたの取るべき行動
職場で起こるハラスメントというと、社内の同僚や上司との関係で発生することをイメージする方が多いかもしれません。しかし、実際には、仕事の関係者、つまり**「取引先」や「顧客」**からセクハラ被害に遭うというケースも少なくありません。
社内の人間ではないため、「強く断ると今後の取引に影響するのでは?」「会社に迷惑がかかるかも…」と心配になり、一人で抱え込んでしまったり、泣き寝入りしてしまったりする方が多くいらっしゃいます。
ですが、取引先からのセクハラも、あなたが我慢する必要は決してありません。そして、あなたの会社には、あなたが外部からのハラスメントからも守られるよう、適切な対応を取る責任と義務があります。
この記事では、取引先・顧客からのセクハラ被害に遭った際に知っておきたい、会社の義務やあなたの取るべき具体的な行動、そして相談先について詳しく解説します。
つらい状況を一人で抱え込まず、解決に向けて一歩踏み出すための参考にしてください。
なぜ「取引先・顧客からのセクハラ」は難しいのか?
取引先や顧客からのセクハラは、社内でのセクハラとは異なる難しさがあります。その背景には、以下のような理由が挙げられます。
- ビジネス関係への懸念: 加害者である取引先や顧客は、会社にとって重要なビジネスパートナーであることが多いです。セクハラ被害を訴えることで、その関係が悪化し、会社の利益を損なうのではないかという強い不安を感じやすいです。
- 会社への報告の躊躇: 上記の懸念から、会社に相談すること自体をためらったり、「会社の迷惑になるくらいなら…」と諦めてしまったりすることがあります。
- 責任の所在が分かりにくい: 社外の人間からの行為のため、「これは会社の責任ではない」「自分で何とかするしかない」と思い込んでしまうことがあります。
- 「これも仕事のうち?」という誤解: 特に対面でのサービス業や営業職などでは、顧客からの多少のセクハラめいた言動を「仕事の一部」だと誤解し、無理に受け流そうとしてしまう傾向が見られます。
しかし、これらの理由からあなたが不当なセクハラ被害を我慢する必要は一切ありません。
知っておこう!会社には「外部からのセクハラ」からも従業員を守る責任がある!
重要なポイントとして、会社には、取引先や顧客といった「外部からのセクハラ」からも従業員を守る責任があるということです。
これは、労働契約法に基づく**「安全配慮義務」や、職場環境を良好に保つ「職場環境配慮義務」**、そして労働施策総合推進法(パワハラ防止法)におけるハラスメント対策義務に含まれると考えられています。
具体的に、会社には以下のような対応を取ることが求められています。
- 方針の明確化と周知・啓発: 取引先等からの迷惑行為に関する方針を就業規則等で明確にし、相談窓口を設置していること、そしてその方針を従業員に周知・啓発すること。
- 相談に応じ、適切に対応するための体制整備: 被害の相談を受けた場合に、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者に対して適切な配慮(例:担当業務や配置の変更など)を行うこと。
- 被害防止のための措置: 加害者(取引先)に対して、行為の内容や状況に応じた適切な行動(例:事実関係の確認、改善の申し入れ、場合によっては取引中止など)をとること。また、再発防止のための措置を講じること。
もし会社が、あなたが相談したにも関わらず、これらの適切な対応を怠った場合、安全配慮義務違反として、会社が損害賠償責任を問われる可能性があります。
取引先からのセクハラ被害に遭ったら、あなたが取るべき行動
つらい状況から抜け出すために、あなたが主体的に取るべき行動はいくつかあります。一人で抱え込まず、以下のステップを参考にしてください。
- セクハラ行為の「詳細な記録」を残す まず、これが最も重要です。 いつ(日付、時間)、どこで(場所)、誰から(加害者の氏名、会社名)、どんな言葉や行為(具体的な内容)を受けたのか、その時のあなたの対応や気持ち、目撃者がいればその人の情報などを、できるだけ具体的にメモしておきましょう。後で会社に相談したり、弁護士に相談したりする際に、状況を正確に伝え、証拠として役立ちます。セクハラに関連するメールやメッセージ、録音・録画データなどもあれば保全しておきましょう。
- 可能であれば「拒否の意思」を明確に示す 状況が許す限り、「そういう言動はやめてください」「不快です」と、はっきりと(あるいは冷静に、あなたの安全を確保しながら可能な方法で)伝えましょう。明確な拒否の意思を示したことは、後の交渉や手続きで重要な証拠となります。難しい場合は、会話を切り上げる、席を離れる、第三者のいる場所に移動するなどの回避行動をとるだけでも記録になります。
- 会社の相談窓口や信頼できる上司に「相談」する 一人で抱え込まず、会社のハラスメント相談窓口、人事部、または信頼できる直属の上司に必ず相談しましょう。相談する際は、記録したメモを元に、いつ、どのような被害に遭ったのかを具体的に伝えます。同時に、「このままでは業務に支障が出る」「担当を外してほしい」「会社として取引先に適切な対応をとってほしい」など、あなたが会社に期待する対応についても伝えましょう。「取引先との関係が悪化するのが不安」といった正直な気持ちも伝えて大丈夫です。会社はあなたの味方であり、守る義務があることを思い出してください。
- 会社の対応を記録する 会社に相談した後、会社がどのように対応したか(または対応しなかったか)についても記録しておきましょう。いつ、誰に相談し、会社からどのような説明を受け、どのような対応がとられたか(あるいは全く対応がなかったか)などです。
会社の対応が不十分な場合や、さらなる対応を求める場合
会社に相談したにも関わらず、適切な対応が得られない場合や、会社の対応に不満がある場合は、一人で悩まず、外部の専門機関に相談することを検討しましょう。
- 弁護士: 労働問題やハラスメント事案に詳しい弁護士に相談することで、あなたの法的な権利、会社への責任追及、加害者への慰謝料請求の可能性などについて具体的なアドバイスを得られます。弁護士はあなたの代理人として、会社と交渉したり、内容証明郵便を送付したり、労働審判や民事訴訟などの法的手続きを進めることも可能です。取引先との関係性に配慮しつつ、どのように対応を進めるかについても、弁護士と戦略を立てることができます。
- 労働組合: 加入している労働組合があれば相談できます。会社への団体交渉を申し入れてもらうなどの対応が期待できます。
- 公的な相談窓口: 労働局の総合労働相談コーナーなど、公的な相談窓口でもハラスメントに関する相談を受け付けています。
- NPO/支援団体: セクハラやハラスメント被害者のための専門的な相談支援を行っているNPOや団体もあります。
まとめ:「取引先からのセクハラ」も、あなたが泣き寝入りする必要はない!
取引先や顧客からのセクハラは、会社のビジネスに配慮して声を上げにくいという難しさがあります。しかし、だからといってあなたが不当な被害を我慢し、心身を壊してしまう必要は全くありません。
あなたの会社には、あなたが外部からのハラスメントからも安全に働けるように環境を整え、被害が発生した際には適切に対応する法的な責任と義務があります。
まずは、被害の状況を詳細に記録すること、そして会社の相談窓口や信頼できる上司に相談することから始めてみましょう。そして、会社の対応が不十分だと感じたら、弁護士などの外部の専門家にも相談し、あなたの権利を守るための行動を起こすことが大切です。
あなたは一人ではありません。勇気を出して相談し、このつらい状況から抜け出すための一歩を踏み出してください。この記事が、あなたが安心できる未来に進むための一助となれば幸いです。