「セクハラ罪」って本当に存在するの? 知っておきたい法律と対策を分かりやすく解説
「セクハラ」という言葉、一度は耳にしたことがありますよね。職場や日常生活で、嫌な思いをした経験がある方、あるいは「これってセクハラなのかな?」と不安に思ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
もし自分がセクハラの被害に遭ったら…? 加害者と間違われてしまったら…? いざという時にどうすれば良いのか、分からなくて困ってしまいますよね。
特に気になるのが、「セクハラって、法律で罰せられる『罪』になるの?」という点ではないでしょうか。今回は、この「セクハラ罪」という言葉の疑問を解消しつつ、セクハラ行為がどのような法律に関わるのか、そして私たち自身ができる対策について、分かりやすくお話ししていきます。
この記事を読めば、セクハラに関する正しい知識が身につき、もしもの時に落ち着いて行動できるようになりますよ。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
そもそも「セクハラ罪」という罪名は存在する?
結論から言うと、日本の法律(刑法)に**「セクハラ罪」という名前の罪はありません**。
「え、そうなの?」と意外に思われた方もいるかもしれませんね。「セクハラ」は社会的に許されない行為として広く認識されていますが、実は刑法に「セクシュアルハラスメント罪」といった明確な罪名が規定されているわけではないんです。
では、セクハラ行為をしても、法律で罰せられることはないのでしょうか? いいえ、決してそんなことはありません。セクハラ行為の内容によっては、別の法律や罪に問われる可能性が十分にあります。
次に、セクハラ行為がどのような法律と関連してくるのかを見ていきましょう。
セクハラ行為が問われる可能性のある法律はこれ!
「セクハラ罪」という名前の罪はないとしても、その行為の内容によっては、日本の様々な法律に触れる可能性があります。主なものをいくつかご紹介します。
刑法に関わるケース
セクハラ行為の中でも、特に悪質で卑劣なものについては、刑法による罰則の対象となります。
- 強制わいせつ罪・強制性交等罪: 相手の同意なく、わいせつな行為をしたり、性的な行為を強要したりした場合に適用される可能性があります。これはセクハラの中でも非常に重大なケースで、厳しい罰則が定められています。意に反する性的な言動は、これらの犯罪に該当する危険性があることを理解しておく必要があります。
- 侮辱罪・名誉毀損罪: セクハラ発言の中には、相手の人格を否定したり、社会的な評価を傷つけたりするものがあります。こうした言動が、侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性も考えられます。SNSなどインターネット上での誹謗中傷と結びつくこともあります。
民法に関わるケース
刑法のような懲役刑や罰金刑ではなくても、セクハラ行為によって被害者が精神的な苦痛を受けたり、働く上で不利益を被ったりした場合は、民法上の責任を問われることがあります。
- 不法行為に基づく損害賠償請求: セクハラは、被害者の権利を侵害する「不法行為」にあたると考えられます。この場合、被害者は加害者に対して、精神的な苦痛に対する慰謝料や、セクハラが原因で仕事を辞めざるを得なくなった場合の損害などを請求することができます。会社に対しても、職場環境配慮義務違反などを理由に責任を問えるケースがあります。
労働法に関わるケース(特に職場の場合)
職場のセクシュアルハラスメントについては、労働関係の法律も重要になってきます。
- 男女雇用機会均等法: この法律では、事業主に対して、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のために必要な措置を講じることが義務付けられています。具体的には、相談窓口の設置、研修の実施、セクハラを行った者への懲戒処分などが求められています。もし会社がこうした義務を怠り、セクハラが発生してしまった場合、会社の責任が問われることになります。
このように、「セクハラ罪」という直接の罪名はないものの、その行為の内容や状況に応じて、様々な法律が関わってくるのです。
職場でのセクハラ、どうすればいい?具体的な対策
職場でセクハラに遭わないため、あるいは万が一被害に遭ってしまった場合にどう行動すれば良いのか、具体的な対策を知っておくことは非常に大切です。
会社(事業主)に求められる対策
男女雇用機会均等法に基づき、会社にはセクハラ防止のための様々な義務があります。
- 方針の明確化と周知・啓発: 「セクハラは絶対に許さない」という会社の方針を明確にし、従業員にしっかりと知らせることが重要です。社内報や研修などを通じて、セクハラの定義や行為類型、相談窓口などを周知徹底します。
- 相談窓口の設置: 被害者が安心して相談できる窓口を設置し、担当者を定めます。相談者のプライバシーを守り、相談したことで不利益な取り扱いを受けないように配慮することが求められます。
- 相談への迅速かつ適切な対応: 相談があった場合、事実関係を正確に確認し、被害者と加害者双方から丁寧に聞き取りを行います。その上で、被害者への配慮を行いつつ、加害者への措置(注意、指導、配置転換、懲戒処分など)を検討・実施します。再発防止策も重要です。
- プライバシー保護: 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、相談窓口の担当者には守秘義務を課します。
あなたの会社にこうした対策がきちんと整備されているか、一度確認してみるのも良いでしょう。
従業員(あなた自身)ができること
会社任せにするだけでなく、従業員一人ひとりが意識し、行動することもセクハラ対策には不可欠です。
- 「NO」の意思表示: セクハラ行為を受けたと感じたら、その場で「やめてください」「不快です」と明確に意思表示をすることが大切です。ただし、相手や状況によっては、その場で反論することが危険な場合もあります。ご自身の安全を第一に考えてください。
- 記録を残す: いつ、どこで、誰に、どのようなセクハラ行為を受けたのか、できるだけ詳細な記録を残しておきましょう。日時、場所、具体的な言動、居合わせた人物などをメモしておくと、後々証拠となる可能性があります。メールやSNSのやり取りなども保存しておきましょう。
- 信頼できる人に相談する: 会社の相談窓口や上司、同僚、家族、友人など、信頼できる人に状況を話してみましょう。一人で抱え込まず、誰かに話すだけでも気持ちが楽になることがあります。
- 外部機関に相談する: 会社の相談窓口に相談しにくい場合や、会社が適切に対応してくれない場合は、労働組合や弁護士、または公的な相談窓口(例えば、労働局の総合労働相談コーナーなど)に相談することも検討しましょう。
- 加害者にならないように気をつける: 自分自身も、無意識のうちに誰かを傷つけてしまう言動をしていないか、常に振り返ることが大切です。相手が嫌がる言動はしない、相手の反応をよく見る、といった基本的な配慮を心がけましょう。
被害に遭ってしまったら?
もし実際にセクハラ被害に遭ってしまったら、まずはご自身の安全と心のケアを最優先にしてください。そして、可能であれば以下の行動を検討してみてください。
- 信頼できる人に相談する: 一人で抱え込まず、まずは誰かに話を聞いてもらいましょう。
- 証拠を集める: セクハラの事実を証明するためには、証拠が非常に重要になります。前述のように、いつ、どこで、何をされたかの記録、メールやSNSのやり取り、録音、目撃者の証言などが証拠になり得ます。
- 会社の相談窓口を利用する: 会社の相談窓口に、被害を受けた日時、場所、内容、加害者などを具体的に伝えましょう。
- 外部機関に相談する: 会社の対応に不満がある場合や、会社が適切に対応してくれない場合は、労働局や弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスをもらいましょう。場合によっては、法的措置を検討することになります。
まとめ:セクハラは許されない行為。正しい知識と行動を!
「セクハラ罪」という名前の罪は法律に存在しない、という事実を知って、もしかしたら少し驚かれたかもしれません。しかし、セクハラ行為は、その内容によっては強制わいせつ罪や強制性交等罪といった刑法上の犯罪になり得ますし、民法上の損害賠償請求の対象にもなります。職場のセクハラについては、男女雇用機会均等法で会社の防止義務が定められています。
セクシュアルハラスメントは、相手の尊厳を傷つけ、働く環境や日常生活を脅かす、決して許されない行為です。
もしあなたがセクハラの被害に遭ってしまったら、一人で悩まず、信頼できる人や会社の相談窓口、あるいは外部の専門機関に相談してください。そして、可能であれば、証拠を記録しておくことが大切です。
そして私たち一人ひとりも、無意識のうちに誰かを傷つける言動をしていないか、常に意識を払い、お互いを尊重する気持ちを持つことが、セクハラのない社会を作るために何より重要です。
この記事が、セクハラに関するあなたの疑問を解消し、いざという時の行動に役立つ情報となれば幸いです。